石の河原

 

 流石に地元の情報誌で里親を募っただけあって、両親の犬も兄弟の犬もみな比較的近くに住んでいた。普段の散歩でも会うぐらい近くに住んでいる兄弟犬もいて、出くわした時の犬たちのはしゃぎようといったら他の犬の比ではなかった。やっぱり兄弟と遊ぶのは格別らしい。

 

 そんな訳で、「黒ラブ一家大集会」は何度か開催された。

 

 ただぼーっと車に乗って連れて行かれただけなので(子供の特権よ!)開催地がどこだったのか正確には分からないのだけれど、ある程度奥まった山の中にある川辺だったり、琵琶湖湖畔だったりしたように記憶している。似たような体格と似たような顔の黒ラブが5匹も6匹も一同に会し、それぞれの家族が集う、中々に大がかりな集まりだった。
 流石に兄弟なので顔は良く似ていたが、この頃には私は完璧に「犬の顔」の見分けがつくようになっていた。勿論性格もなにもかもみんな違う。一緒に暮らし出すまで「犬」という大雑把なくくりでしかなかった生き物は、まず犬種に分類され、個体として認識されるようになったのだ。

 

 

 彼らは水遊びが大好きだった。

 そもそもラブラドール・レトリーバーは泳ぎが得意な犬種である。まず基本は枝投げ。おっこちてる木の枝を水の中に投げてやると、何のためらいもなく水の中に「ばっしゃーん!」とダイブし、長い尻尾で舵を取りながら見事な犬かきでその枝を取って帰ってくる。水面に浮かぶような黒い頭は海坊主みたいで、やや上向きに突き出した鼻面がなんとも頼もしい。距離が近くなってくると、ふんっ、ふんっと水を吹き飛ばさんばかりの呼吸まで聞こえた。

 

 そして彼ら一族の特技というか、性質がもうひとつあった。それは「石拾い」である。

 枝と同じ要領で川辺の小石を水に投げ入れる。枝と違って石は沈んでしまうが、まるでそれを追いかけるように犬たちはスッと水の中に潜ってしまう! ラブラドールは潜水までするのか! 大丈夫なのか!

 やがて水面から現れたずぶ濡れの真っ黒い顔は、その大きな口に収まりきらないほどの巨大な石をくわえている。ちょっと待て! それはさっき私が投げた石じゃねえ!!

 しかし水から上がってきた犬は河原にその巨大な石を置いて、さも得意げな顔で尻尾を振っている。見ればうちの犬だけではなく、親犬も兄弟犬も巨大な石を次々と川の底から拾い上げてきていた。なるほどこれが遺伝……。

 

 外で遊ぶのが何より大好きな犬の肉球は、いつもさわやかな草の青さと、ポップコーンのような香ばしい香りがした。