浸かってはいない沼の話

 

 一応、自我としての私は未だ「ばんぎゃる」なのですが、バンドを追うこととかそれに付随することに割とかなり疲れてしまったのでいまはあんまりばんぎゃるをしていないです。で、全国ツアーだわーい! 遠征だーいすきー! 夏は海! 冬は元気! 新幹線を異常な率で止める能力者!*1 系のアクティブクソ野郎な私がふっと現場にいくことをやめたときに何を思ったかと言うと。


「お金が余ってる!」


 余ってない! 何も余ってないから! 落ち着いて!
 いやでも実際、あれーボーナス何に使おうかなーってなったんですよ。だってまずツアーって発表されてチケ発で10万飛ぶじゃないですか。そのあと各所回る足代と宿泊費で10万飛ぶじゃないですか。それがないんですよ。おっと20万余ってる(余ってない)。
 時間にもお金にも余裕ができると実施されるのが『突撃☆隣の沼探訪』。まぁもともと演劇は好きだったし興味もあったのですが、いかんせんばんぎゃるをやっていると時間もお金もそっちに吸い取られていましたからそりゃ余力が出たらそうなるよね。あと、意外と周囲にいる。気づいたらテニミュ勢に取り囲まれていたりする。それとメサイアな。

 そこでまずどこから手を出そうって考えたとき、やっぱり刀かなーと思った訳です。ミーハーだから。そもそもばんぎゃる時代も現場至上主義的なところがあったので、DVDから予習とかそういうことは一切頭にありません。まずは現場! 次に現場!
 なんと幸いなことにチケットが手に入ったので、まじで刀剣の名前すらうろ覚え、役者の名前はすずきひろきぐらいしか分からないです! という状態で人生初の2.5次元現場に赴きました。俗に言う刀ステ初演ってやつです。
 世間のひとはわかりませんが、私はこうした『真っ白な状態にいきなりナマモノを叩きつける』という行為が結構好きです。バンドもそうなんですけど予習ってそんなに必要かな、と思うことがままあります。勿論、ある程度の下地はあったほうが楽しめることは多いです。それでもなお、私は余分な情報なしに目の前にぶちまけられたものだけで自分が何を思うのかを知りたいという欲求に勝てない。知識は後付けもできるし、後々に「あれはそうだったのかー!」って繋ぎ合わせていくのもパズルみたいで面白い。まぁかなり色々なものを取りこぼしてる気がするので、特におすすめはしません。

 なにせその初体験も、すずきひろきすげえな! ぐらいしか感想が言えなかった。いや、凄かったんですよ鈴木拡樹。凄いとは聞いていたけど凄かった。ちょっと他の役者とは存在が違った。あ、これが次元が違うってやつかと思った。ただ、いかんせん元のゲームをやってないので「推しがー! 実装された推しがー! 動いているー!」という2.5次元特有とも言われる感動は皆無でした。なんて贅沢なんだお前は。
 それでも鈴木拡樹の凄さが凄すぎて、気が付いたらその直後に彼が出演する公演のチケットを取っていました。自分のこういうフットワークの軽さ、嫌いじゃないぜ。
 この辺りからじわじわと、周囲からの絡め手が本格化していきます。染さまの顔面に抗えず「この顔になりたい2016アワード」を差し上げた辺りである映画の公開記念イベントに行くことになりました。壇上で顔の良い男たちがキャッキャしておったわ。何だこれわ。

 

 そんな私にも遂に訪れるのです。

 そう、『推し』が。

 

 2次元の推しが、2.5次元に実装されたあの衝撃が!

 

 ばんぎゃるを上がり始めたみんなたちの行き着く先は、大別すると声優、わかてはいゆー、ジャニーズ or LDH。そしてソシャゲに課金してるという偏ったイメージがあります。私も例に漏れずソシャゲというやつに初めて触れ『あっ。これが、推し……』になっちゃったんですよねそうそうあんさんぶるスターズ!って言うんですけど。周りから散々「お前はKnightsか生徒会長。ていうか多分生徒会長」と言われ続け蓋を開けたらまんまと「あーーーーーーー」って落ちていった先が天祥院英智って言うんですけど。

 あんステTYM*2の情報が出た瞬間、予習とか好きじゃなーいと言ったその口で「誰ですか! 前山剛久って誰ですか!!」と叫びながら推しを演じる役者さんについて調べ上げ、直近の舞台のチケットを粛々と押さえました。結果としてお芝居はとても面白かったし、実際目にしてああこの方が演じる英智さまはきっと素敵だと、、、理性があったのはここまでです。

 あれは、理性が蒸発する。

 いい加減私はびじゅあるけいのことを2.5次元だと思っていたのですが、認識が甘かった。2.5次元とはこういうことだったのか! 次元の壁を越えている! 現実に実装される非実在推し! なんだこれは! 知らない世界だ! すごい! えっ、推しが! 推しがファンサしてくれる! 推しが! あああああ!
 推しを前に理性などないのでTYMは8公演入ったんですけど、ほんとツアーを回るばんぎゃると性根はおんなじなんだなと思いました。多ステしたからこそ気づくことのできる差分! 大阪2日目の昼から生徒会のシーンの演技プランが変わって、その日の夜公演から精度がはね上がったのが個人的にめちゃめちゃグッときました。これだから現場ってやつは。

 


 まぁ正直、「キャラを借りている」とか「~を生きる」とかその辺のお作法のことはまだ良くわかっていないし、推しの仕事を見るために舞台に行ってんだよというファンの方の言説にもなるほどと思うだけでやっぱり良くわかってないです。スカスカの現場にもまだぶち当たってないし、敢えてあまり深く考えないようにしていることは多くあります。言い出したらキリがない……やだやだ、そういうのもういいから。

 だから私の目下の目標は「推しを作らない」ことです。芋づる式に掘っていくのは楽しいです。どんどん解像度が上がってゆくのも愉快です。あと友人たちが好きなはいゆーも自然と覚えます。わかってる、わかってるんだ推しを作ったときの楽しさはわかってるんだ。でも私は浅瀬でちゃぷちゃぷしていたいの! いやあ、みんな顔がいいなあ! 以上だ! それ以上のことは考えたくない! 私は上澄みの綺麗なところだけを啜っていくからよろしくな!!

 

*1:年に数回は致命的な遅延にぶち当たります

*2:あんさんぶるスターズ!on stage の二作目、Take Your Marksの略称